多くの人が、虫歯予防にはフッ素が効く、ということをご存じでしょう。薬局に行けば、フッ素入りの歯磨き粉が何種類も置いてありますし、全国の幼稚園や小学校でフッ化物洗口を実施するところも少しずつ増えています。フッ素はどんな働きをして、私たちの虫歯を予防してくれるのでしょうか。
フッ素が虫歯を予防する仕組みを知るまえに、まず、虫歯がどのようにできるのかをみてみましょう。
虫歯の原因となるのは、ミュータンス菌などの細菌です。細菌は、私たちが飲んだり食べたりした物の糖分を栄養にして増えますが、その際、グルカンというネバネバの物質を出し、プラーク(歯垢・しこう)と呼ばれる細菌のかたまりを作って歯の表面にくっつきます。
歯の表面は、厚さ2~3ミリのエナメル質でおおわれていて、このエナメル質は、「ハイドロキシアパタイト」という物質の結晶でできています。ハイドロキシアパタイトはとても固い結晶ですが、酸に弱いため、プラーク中の細菌が糖を分解するときに出す酸に触れると、結晶の中のカルシウムやリン酸が溶け出してしまします。これが虫歯のはじまりで、「脱灰(だっかい)」といいます。
ところが、しばらくすると唾液の働きによって口の中の酸が中和され、いったん溶け出したカルシウムやリン酸は、ふたたび歯に吸収されます。これを「再石灰化」と呼びます。
再石灰化よりも脱灰が優勢になると、虫歯になってしまいます。お菓子をだらだら食べたり、歯磨きをしっかりしないと虫歯になりやすいのは、脱灰の時間が長くなってしまうからです。
さて、ここでフッ素の登場です。フッ素の虫歯予防の効果は3つあります。
①いったんエナメル質から溶け出したカルシウムやリン酸がふたたび歯に吸収されるとき、唾液の中にフッ素があると、より吸収されやすくなります。すなわち、再石灰化を促進する作用があるのです。
②エナメル質を作っているハイドロキシアパタイトの成分の一部がフッ素イオンと入れ替わり、フルオロアパタイトとなります。フルオロアパタイトはハイドロキシアパタイトよりも酸に強いので、虫歯になりにくくなります。
③また、フッ素には細菌の活動を抑制して、酸を作らないようにする働きもあります。
このように、フッ素は虫歯予防に対して非常に効果があります。フッ素の有効性と安全性は、世界的にも認められていて、WHO(世界保健機関)もフッ素の利用を推奨しています。
虫歯を予防するための正しい歯磨きや規則正しい食事にフッ素の上手な利用を加えて、人生100年時代に丈夫な歯を守りましょう。
